10%への増税を控えた今、オーナーとして注視すべき3つのポイント
2018年から本格的に、消費税率が8%から10%に引き上げられる旨が報道されていますね。景気後退の懸念から見送られることも過去にはありましたが、今回は予定通り実施されるという見方が強く、その場合、いよいよ2019年10 月には増税となります。
個人消費への影響は想像に難くないものの、オーナーである皆様へのビジネス影響としてどのようなことが想定されるのか、改めて振り返りたいと思います。
結論から申し上げますと、あまり良い影響はありません。むしろ収益性を悪化させかねないリスクを孕んでいます。しかし、決して悲観的になる必要はありません。リスクを着実にヘッジしながら収益を増やしていきたいオーナーにとって、正しい知識と考え方こそが重要といえます。今回は、「①売上への影響」「②コストへの影響」「③対策する際の考え方」の観点から、要点を押さえていきましょう。
ポイント①:売上への影響
まず売上への影響ですが、一般的な賃貸住宅経営の「賃料」は課税対象ではありません(事業用不動産や短期契約などのケースを除く)。一方、賃貸人・賃借人の間で合意の上、一度契約した賃料について、増額する際の法的な取扱は借地借家法32条第1 項にて、下記の通りに定められています。
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」
つまり、賃料の増額を請求すること自体は認められているのです。また、契約の条件にかかわらずとの記載がありますので、随時、賃料増額の請求をすることができます。しかし、増額請求を機に入居者が退去してしまうことも十分に考えられます。既存入居者を失ってしまうのは経営リスクが高く、現実的には増額請求は難しいと捉えるのが得策といえるでしょう。
ポイント②:コストへの影響
つぎにコストへの影響ですが、課税対象ではない賃料(上記例外あり)とは逆に、リフォーム費用や管理費、水道光熱費などの諸経費には課税対象であり、10 月から10%の消費税が発生してしまいます。
増額請求を行わないケースではコストのみが増加してしまうため、必然的に収益性が悪化してしまいます。経過措置の期間内で、リフォームやリノベーションを実施するオーナーも例年増加する傾向にありますが、建築資材や人件費の高騰を背景に、価値に見合わない施策を実施してしまう危険性もゼロではありません。
またオーナーが新たに賃貸物件を購入する際は要注意です。土地は課税対象ではないのですが、建物部分は課税対象のため、2%の消費税差分の影響を大きく受けてしまう可能性が高いです。金額が大きい場合は、尚のこと注意が必要です。
ポイント③:対策する際の考え方
売上、コストの両サイドから原則を振り返りましたが、上記を踏まえてどのような経営判断を行うか、その考え方が肝となります。増税による収益へのインパクトは、オーナーそれぞれがお持ちの物件特性、および設定されている収益目標によっても大きく異なります。ゆえに、一概に正解といえる対策はないのですが、だからこそ、【物件個別】と【全体】の両方の視点から、丁寧に検討していくことを強くお勧めいたします。
観点の一例を記載いたしますので、ぜひ下記を参考になさってください。
【物件個別】
・物件個々の増税による収益インパクトは金額ベースでどの程度か
・建築費(人件費含む)の相場を踏まえ、増税前の大規模修繕は得策か
【全体】
・賃貸経営トータルで得たい収益は担保できる見立てか
・収益目標との差分が大きい場合、新たな物件購入などを検討するべきか
・購入検討の場合、直近の市況変化を踏まえてどのような物件がベストか
・保有する不動産の整理をどのように進めるか
さいごに
冒頭にも申し上げましたが、リスクを着実にヘッジしながら収益を増やしていくことこそ、不動産賃貸経営の醍醐味です。増税という外部要因の変化に対峙する今だからこそ、高い知識と経験を兼ね備えた専門家にご活用いただくのも有力な手段です。
株式会社ネクステップでは増税時のご不安を解消できる税理士・不動産鑑定士等のプロフェッショナルと提携しております。お気軽にご相談いただける「無料相談窓口」もございますので、まずは下記フォームからのお問い合わせをお願いいたします。